生活に関する相談と支援

カンデルさん(30歳代)は、コックとして来日以来、インド料理店で真面目に働いていた。最初の3ヶ月はほとんど休みもなく働き続けたが給料は支払われず、やっと月9万円の給料を得られるようになった。その後は1年ごとに月に10万円、そのまた1年後に11万円と昇給したものの、12万円になったところで昇給は打ち止めとなった。


これまでにも、インド料理店の経営状況によっては給料支払いが遅れたり、未払いがあったという。未払いの総額は200万円近くにのぼる、とのこと。そんな折に、急にインド料理店を閉店すると会社社長より通告され、同僚とともに社長に何度もかけあったが相手にされず、数日前に4万円がカンデルさんはじめ職員に手渡されたのみで、これ以上は一切払えないと断られた。カンデルさんは少ない給料からやりくりして母国の家族に仕送りを続け、これまでにも年に1回程度は帰国していたため、貯金は全くなかった。

カンデルさんは同僚とも相談し、他の店で就職できないか探したがどこも経営が厳しく、転職はままならない。技能ビザで入国しているため、インド料理のコックとして以外には仕事はできない。そもそも、カンデルさんは来日して5年近くが経過するとはいえ、日本語の会話もおぼつかないような状況であり、同郷の仲間がいるインド料理店での仕事以外での就労は難しい。会社からは、現在同僚と一緒に住んでいる社員寮からも早々に出ていくように迫られていた。

外国人が陥る制度の狭間への支援

途方に暮れて行政に相談したのだが、技能ビザで入国した外国人であるため生活保護の適用はできない、とのことで生活保護担当課から「生活困窮者レスキュー事業」に「相談にのってあげて欲しい」と回ってきたのである。早速、CSWと社会貢献支援員が役所の生活保護担当課窓口まで赴き、ケースワーカーも交えて面談を行った。

相談の中で、本人には預貯金がないこと、会社からもこれ以上は支払が望めないこと、行政としても制度での対応が不可能であること、が確認された。カンデルさんの望みは「せめて、母国に帰国したい」とのことであった。そこで、1週間程度の食材支援を緊急で行うことに。しかし、食事についても食文化の違いがあり、調味料等で日本のレトルト食品などは食べられないものが多数あり、専門の業者から取り寄せなければならなかった。

その後、CSWと社会貢献支援員は役割分担して、労働基準監督署へ給料未払に関する相談、あわせて弁護士にも相談を行ったが、今すぐに解決できる方法は見いだせなかった。続いて某国大使館(東京)に問合せをし、何とか助けられる方法はないかとかけあったが、「連れてきてください」との話だった。今、食べる物にも事欠く状況で東京まで相談に出かける余裕は全くない。大使館との交渉は諦め、関西に拠点がある某国人協会にも連絡をとったが、「経済的な支援は厳しい」と色よい返事は返ってこなかった。

社員寮を訪問し、今後の方策をカンデルさんらと相談。カンデルさん以外の同僚は配偶者がいて就労しているため、当面の生活はなんとかなる、とのことであったので、あとはカンデルさんの今後が相談の焦点となった。事前にCSWや社会貢献支援員は施設長とも相談しており、他に手段がないのであれば航空チケットを「生活困窮者レスキュー事業」で手配するしか方法がないと判断し、せめて母国に帰国できるように支援する方向ですすめていくことなった。チケット手配については、カンデルさんの同郷の仲間を通じて調達したものが一番格安であることが確認されたため、それを用意し、1週間後には帰国することとなった。

帰国当日。CSWと社会貢献支援員は、社員寮までカンデルさんを迎えに行き、空港まで車で送った。カンデルさんは無事に帰国の途についた。CSWや社会貢献支援員は「ありがとう」とお礼のあいさつを受け、その笑顔を確認したことで少しほっとして見送った。その後、カンデルさんの同僚を通じて連絡があり、無事に母国に着いたこと、とても感謝していた、との報告を受けた。

世帯の状況/事例のキーワード

【世帯の状況】
本人:30歳代/男性/外国籍

【キーワード】
給料未払い/失業/技能ビザ/生活保護対象外

主な支援内容

□ 当面の食材支援(食文化の違いに配慮/経済的援助)
□ 大使館や弁護士はじめ、関係機関への相談・交渉
□ 帰国のためのチケット手配(経済的援助)



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