生活に関する相談と支援

大川晴男さん(50歳代)は、知的障がいの可能性があると思われるが、これまで福祉の相談はしたことがなかった。少し歳の離れた兄と一緒に暮らしていたが、兄が病気で急死した。大川さんはどうしてよいかわからず、しばらく家に残っているものを食べて暮らしていたがそれもすぐに底をつき、食べる物に困って「強盗でも・・」と包丁をもって家の外へ出たところを警察官に職務質問され、拘置所に拘留されることとなった。拘留されている間に、兄が家で死亡していることが発見され、アパートも解約。大川さんは執行猶予つきの判決が下されて拘置所から出所したものの、帰る家がない状態であった。


大川さんへの支援は、まずは住居設定を行うことからはじめなければならなかった。ちょうど、検察から不安定就労者向けの専門相談機関へ連絡が入り、住居確保のめどはたった。同センターの相談員がかかわる中で、兄の遺産が約90万円あることがわかり、当面の生活費もあるためすぐに生活保護申請というわけでもない。高齢者でもなければ、障害手帳などを所有しているわけでもない。とはいえ、病気がちで一人きりの生活となって不安を抱えている大川さんに誰が寄り添っていけるのか。そんな中で、「生活困窮者レスキュー事業」へと相談が寄せられた。

相談を受けた社会貢献支援員は大川さんが住むこととなったエリア(これまでの住所地からは離れており、大川さんにとっては不慣れな地域)の老人福祉施設のコミュニティソーシャルワーカーに連絡を取り、一緒に大川さんの家を訪問。病気で体調不良が続き、住まいも変わって不安を抱えている大川さんの気持ちに寄り添うことをまず第一に考え、しばらくの間、紹介元の相談員とも連携しながら定期的な訪問を繰り返し、励ますこととした。地域で見知った方、相談できる機関などとのつながりができるまで、同センターの相談員や社会貢献支援員、コミュニティソーシャルワーカーが大川さんにとって「心のよりどころ」となるよう、その後は2週間に1回程度は様子を見に訪問することとし、日常生活上の困りごとはないか、不安なことはないか、じっくりお話を聞くこととした。

その上で、地域の中で大川さんの支援に関わってくれるところはないかと、さまざまな相談機関へ連絡、相談を重ねた。地域定着支援センターに連絡したところ、地域の救護施設の通所事業を紹介され、そちらへ相談することに。すぐに通所事業利用、救護施設で見守り等の対応というわけではないが、将来的な対応のつなぎを行った。

また、大川さんにとっては不慣れな地域であるため、孤立することを防ぎ、地元の地域情報などを届けることなども期待して、地元の社会福祉協議会にも相談し、生活支援担当の相談員が介護保険サービス等の利用に至るまでの間、週1回程度の声かけ・見守りを引き受けていただけることとなった。

病気の進行が驚くほど速く、入院生活も1ヶ月近く経過した頃に大川さんは死去。斎場の手配などは生活保護ケースワーカーが担当し、同センター相談員と社会貢献支援員でお見送りした。

世帯の状況/事例のキーワード

【世帯の状況】
本人:50歳代/男性/知的障がい
兄 :60歳代/男性/(病気のために死亡)

【キーワード】
孤立/狭間/寄り添い

主な支援内容

□ 不安を和らげるため、定期的な見守り・訪問
□ 地元の社会資源の調査、相談機関等への働きかけ、つなぎ
□ 入院後のお見舞い訪問と生活保護申請手続きのサポート



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