生活に関する相談と支援

坂本正造さん(70歳代)はアパートで一人暮らし。20歳代後半に統合失調症を発病して以来、障害年金と生活保護を受給しながら通院治療し、日中は地域活動支援センターへ通って生活している。センターでは内職の軽作業に従事し、昼食をとることができるため、落ち着いた生活を送ることができている。しかし、金銭管理がとても苦手であり、生活保護費を計画的に使うことができないため、お金がなくなるとセンターでとる昼食1食のみで過ごすこともよくあったそうだ。本人はさほど意に介さないようで、それでもなんとか生活できていた。


大阪では多くの地域で、一人暮らし高齢者等を対象にした小地域ネットワーク活動の見守り訪問などを行っており、その一環で民生委員が坂本さんを訪ねた際に、足の踏み場もないほどゴミや洗濯物が散乱し、わずかな隙間で眠っている状況を確認した。ゴミの片づけや生活用品の支援など民生委員がしばらく支援したが、すぐに片付く量ではなかった。そんな矢先、坂本さんから「同じアパートの住民の生活音が気になり、家に帰ることができない。夜遅くにならないと家に入れない」との訴えがあり、精神的にも不安定な状況になっていることがわかった。

そこで、民生委員は坂本さんが住むアパートの大家に相談し、大家が管理する近くの別棟のアパートの空室へ引越させてもらえることとなった。民生委員は行政の生活保護担当課に相談したが、転居に伴う生活用品の調達といった諸費用を制度でみることは難しいとの返答だった。並行して貸付の相談も行ったが要件が当てはまらないことがわかった。こうした経緯から地域包括支援センターを通じて「生活困窮者レスキュー事業」に対して「引越にともなう諸経費について相談にのってほしい」と連絡が入り、CSWと社会貢献支援員も坂本さんの生活支援に加わることとなった。

そこで、坂本さんの支援に関係する人が一度集まって今後の支援方策を検討しようということになり、ご本人を含め民生委員や地域活動支援センター職員、CSW、社会貢献支援員らでカンファレンスを実施。引越の必要性については民生委員の働きかけもあって生活保護担当課のケースワーカーも理解を示してくれており、あとは、その諸費用や今後の見守りの体制をどうするかを話し合った。

カンファレンスの中で「生活困窮者レスキュー事業」に対しては故障した冷蔵庫や惣菜を温めるための電子レンジ(自炊はできない様子)、寝る場所を確保するためベッドを支援できないか、との相談があった。また、数年前にも地域活動支援センターのスタッフが部屋の片づけを行い、ホームヘルパーの利用を勧めたが頑なに坂本さんが拒否したため、利用に至らなかったことがわかった。布団や毛布については民生委員から近隣の地域住民に呼びかけて調達する見込みがたったので、炊飯器だけは自分で購入してもらうこととした。

引越に向けて、民生委員が本人と相談して少しずつ部屋の片づけを行った。地域住民によるボランティア、社会福祉協議会や老人福祉施設の職員による支援を得て引越を行い、あわせて仕分けしたゴミの処分も行った。これにあわせて、CSWや社会貢献支援員も電子レンジや冷蔵庫、ベッドを「生活困窮者レスキュー事業」による経済的援助として購入して、引越先に届けた。掃除が進むにつれて家の中の様子もいろいろわかり、洗濯機も故障して動かない状態であったため、「生活困窮者レスキュー事業」としてこれまでに地域住民から寄贈を受けていたリユース可能な洗濯機が老人福祉施設で保管されていたため、それをリサイクルで提供することになった。

その後も、民生委員を中心に近隣での見守りや相談できる体制と関係性が構築でき、近所の八百屋にも協力を依頼して、支払いは年金支給日まで待ってもらうなど、地域での支援の輪がひろがることで、坂本さんも安心して暮らすことができている。

世帯の状況/キーワード

【世帯の状況】
本人:70歳代/男性/精神障がい/生活保護受給中

【キーワード】
不衛生な生活環境/金銭管理/近隣とのトラブル/民生委員

主な支援内容

□ カンファレンスの開催
□ 電子レンジや冷蔵庫、ベッドの支援(経済的援助)
□ リユース可能な洗濯機の支援(寄贈によるもの)
□ 引越作業の手伝い



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