生活に関する相談と支援

小川洋子さん(仮名、30歳代)は、子ども2人と夫との4人暮らしだが、結婚当初から夫からの言葉の暴力に悩まされていた。景気もよくないためか、夫の仕事が順調ではないことも重なって、子どもが生まれてからの生活はさらに苦しくなり、夫が家計にお金をほとんど入れてくれない月もあり、乳幼児2人を抱えた洋子さんは仕事に出ることもかなわず、子どものミルク代にも事欠く状態であった。子育てやお金のことで夫婦間での言い争いも多くなり、暴力を振るわれることもしばしばで、洋子さんは身の危険を感じて警察に相談。女性相談機関の紹介もあって緊急的に遠く離れた民間シェルターへ避難することができた。


「生活困窮者レスキュー事業」に相談が寄せられたのは、洋子さん親子がシェルターから出て、居宅を構えて新たな生活をはじめたい、と思い始めた時だった。「生活困窮者レスキュー事業」では女性相談機関や民間シェルターからの相談も少なくなく、過去に支援を通じて連携を図ったことがあったため、女性相談機関とシェルターを通じて社会貢献支援員(W)に連絡が入り、さっそく本人と面談を行うこととなった。

洋子さんは夫に見つからない安全な土地での生活を望んでいた。社会貢献支援員(W)と老人福祉施設のCSWは、希望に沿うような物件を探すこととした。「生活困窮者レスキュー事業」の相談業務では、経済的に困窮した状態の方々が大半のため、賃貸物件探しでは費用面で苦労する。そこで、過去に何度も物件を紹介してくれており、生活困窮者の自立支援のための事業だということをよく理解していただいている不動産業者の一つに、A市での物件を紹介してもらえるか相談した。不動産業者の担当部長も事情をよく理解していただき、住宅の初期設定費用を減額してくれるなど、大いに協力頂けた。洋子さんも親や知人に相談してわずかばかりのお金を工面してもらい、なんとか新居を設定する目途をたてることができた。

洋子さんが住んでいた街や民間シェルターがある地域から遠く離れたA市へと引越するにあたり、社会貢献支援員(W)は、行政ルートでのスムーズな引継ぎをお願いするとともに、A市を担当する別の社会貢献支援員(Y)に連絡を入れて、A市の行政のDV相談担当者と連絡をとって当面の生活のサポートや、引越後すぐに生活保護申請を行い、生活の安定を図るための相談同行等で支援をしてもらえるように引継ぎを行うこととした。

社会貢献支援員(Y)は早速、洋子さん親子の生活に必要なものをリストアップ。洋子さん親子は着の身着のままでシェルターに避難していたため、家財道具はおろか洋服などもほとんど持ち合わせておらず、生活保護の受給が決定してもすべてを用意することは難しいことが当初から懸念されていたからだ。A市で「生活困窮者レスキュー事業」に取り組む老人福祉施設に声をかけて生活用品の調達についてすぐに協議し、地域の方から寄贈頂いた布団を保管している施設があることがわかり、それを洋子さん親子の支援に提供いただくこととなった。

その後、A市において生活保護担当課やDV担当相談員、老人福祉施設のCSWや社会貢献支援員(Y)がカンファレンスを開催し、生活保護受給の見込みやその後の生活支援のあり方について役割分担を行った。居宅探しから布団の提供など、切れ目のない支援を行ってきた「生活困窮者レスキュー事業」のCSWや社会貢献支援員に対して、一定の信頼を寄せていたこともあり、不慣れな土地でのちょっとした生活面での相談はCSWや社会貢献支援員が、福祉の制度利用等に関する相談は行政の担当者がそれぞれ行うこととした。カンファレンスの中で保険金の解約で若干の収入を得ることができたため、当面の生活費はそれを充てることとし、それも底をつくようであれば生活保護の申請へスムーズにつないでいくことを確認した。

さらに、社会貢献支援員のネットワークを活用し、A市に限らず、大阪府内の施設等にも呼びかけて、府内の数か所の老人福祉施設で保管されている洗濯機や冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロ、炊飯器、コタツ、鍋など当面の生活に必要な生活用品を調達して、提供することができた。その間も、CSWや社会貢献支援員(Y)と電話や訪問を継続して行い、暮らしぶりも安定してきた。

数週間経過し、生活保護のケースワーカーから社会貢献支援員(Y)に連絡があり、洋子さん親子について生活保護受給が決定し、元気に暮らしているということがわかった。ほどなくして洋子さんからも社会貢献支援員(Y)に電話があり、「順調に生活している。生活用品も自分で少しずつ揃えていくことができるようになってきた。以前に支援いただいた布団やコタツは、他に同じように困っている方に役立ててほしい」と返品の申し出があり、返品していただくことにした。

それから何日か経過し、洋子さんの家の近所に別の相談で行くおりに、布団やコタツの引き取りに社会貢献支援員(Y)が立ち寄ると、洋子さんから「あの時は、本当にありがとうございました。大変助かりました。前に住んでいた地域の友人が子どもの衣料などを送ってくれると言っており、助かっている。自分も誰か困っている方があれば提供したい。子どもたちが大きくなったら、相談にのってくれた方々(CSWや社会貢献支援員)のように、困っている方のためになるようなことがしたい。福祉の勉強をしたい」と話され、前向きな気持ちで新たな生活も前進していることがうかがえた。

世帯の状況/キーワード

【世帯の状況】
本人:30歳代/女性/DV
子 :乳幼児(2名)

【キーワード】
広域的な連携/切れ目ない継続的な見守り/物品支援(経済的援助は行っていない)

主な支援内容

□ 賃貸物件探し(不動産業者への相談、交渉)
□ 生活用品の調達と物品支援(布団、冷蔵庫、洗濯機、コタツ、・・・)
□ カンファレンスの呼びかけ、開催による役割分担
□ 不慣れな土地での生活面での相談、見守り(訪問、電話)



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